「日本の国際物流を変えていきたい」数多くの困難を乗り越えて生まれた 国際物流クラウドサービス |ソリューション|鴻池運輸-九州现金网
写真左から
国際統括本部 担当課長 上月 勇人
国際統括本部 副本部長 蓮實 一洋
ict推進本部 エンタープライズシステム部 持丸 貴之
ict推進本部 エンタープライズシステム部 部長代理 長岡 数朗
※所属・役職名等はインタビュー当時(2023年3月)のものです。
2022年4月にリリースされたkbxは、国際物流の見積もり・発注や荷物の手配状況の確認、チャットでのやりとりの確認などを、パソコンやモバイル端末で行うことができる国際物流クラウドサービスである。海外への貨物の輸送をkonoikeグループに依頼する際、konoikeグループの各拠点に発注を行うが、国際物流の世界では電話とメール、fax、紙の伝票でやりとりをしていた。当時のことを国際統括本部副本部長である蓮實 一洋はこう語る。
蓮實:私は入社以来、長らく国際物流の現場で働いていて、高く積まれた書類に囲まれながらアナログな方法でお客さまとやりとりをしていました。何枚もコピーをとって税関へ書類を届けるという原始的なやり方。書類の不備不足による間違いも起こりやすい。時代がメールに変わっても、お客さまが知りたい内容を事細かに検索して業務履歴を一つ一つ確認し探していく、そんな世界でした。
しかし、kbxであれば荷物の手配状況を知りたいときには、一覧表示で即座に確認できる。konoikeグループでも輸出業務のオンライン見積もりや商談依頼のシステム構築は、業界に先駆けて行われていた。しかし、ワンシステムで輸出入業務のフロー全体を管理するまでには至っていなかった。
そこで、このプロジェクトの立ち上げに任命されたのが、先ほどの蓮實と国際統括本部に所属する上月 勇人。全てはここから始まった。
上月:何が大変だったかと言えば、それまで私は国際物流の実務経験がゼロだったこと。国際物流は税関・港湾業者・船会社への手続きなど、関わるプレイヤーや工程が極めて多く国内輸送に比べてはるかに複雑です。初めのうちは拠点メンバーとの会議で飛び交う単語が分からない状態。会議が終わると国際物流の用語や流れを勉強する毎日。全体像を把握するのに半年かかりました。書籍やwebサイトなどから情報を得ようにも、国際物流の個別業務に関する資料はあるものの、体系的に解説された資料は全く無かったのです。
今回のプロジェクトでの私の役割の一つは、課題や要望を現場から吸い上げ、開発メンバーに、優先的に開発すべき内容を適切に理解できるよう伝えること。そのため、国際物流の全体を把握しなければ成り立たない。そこで私は国際物流の全体を把握・理解するための資料を自作しました。まさに“虎の巻”ですね。子供の頃から物事を分類・図解するのが好きだったので、今回それが役に立ちました。これのおかげで、拠点のメンバーとしっかり向き合って話ができるようになったのです。
プロジェクトを立ち上げ、最初に始めたことは“デジタルフォワーディング”と呼ばれる国際物流の手配をオンラインで簡単かつスピーディに行う手法についてのワークショップだった。
蓮實:プロジェクトは立ち上がったものの、現場からの声は「わざわざ、お金をかけてまで変えなくてもいいじゃないか」というものばかりでした。人間は現状から変わることを避けたがる生き物。かくいう私もit用語をあまり知らないし、itの知識は乏しかった。しかし、現状のままじゃダメなことは誰もが分かっているのも確かでした。
この状況を打破するために、最初にデジタルコンサルティングの先生に手ほどきを受け、開発メンバーを含めたワークショップを行ったのです。
世界に目を向ければ、米国のデジタルフォワーディング企業が大きく業績を伸ばしていた。一方、日本では当時1社だけ。今始めればこの分野を牽引できる。いち早く挑戦し踏み出せば、サービスが均一化し価格競争になっていたマーケットから抜け出しブルーオーシャンへと漕ぎ出すことができる。ワークショップを通じて、自らのマインドセットを変えることができたのです。
上月:物流の世界では輸送スケジュールの変更は日常茶飯事。それをweb上で簡単に把握できるだけでも大幅な時間の削減ができます。他にもお客さまが最初に入力されたデータを後続の処理で転記することができれば、工程全体における二重三重入力の削減になります。
デジタル化により業務改善され、売上は上がりコストは下がる。さらに、生産性が高まれば、空いた時間を営業活動に回すことが可能になる。効率的な働き方で、残業時間削減にもつながります。
ワークショップを通じてdxの必要性が醸成されていくも、今までの業務スタイルに慣れた現場担当者の方々に、デジタルフォワーディングの考え方を理解してもらうことは、一筋縄にはいきませんでした。
そんな中、現場担当者にデジタル化のメリットを地道に訴えていく過程で、どのようにすれば理解が深まるか、そのコツが分かってきました。それは、実際に目に見える形にしないとイメージをしてもらえないということ。そこで、実際には動かすことのできないkbx画面のモックアップを製作し、デジタルでの仕事の進め方を理解してもらうという方法で、各拠点を奔走しました。
そんな地道な努力を続け、現場担当者の理解を深めていきながら同時に意見を吸い上げていった。その意見をその都度、開発に反映させていくのであれば、機能単位を短いサイクルで設計・開発・テスト・実装していく“アジャイル開発” ※1で進めることがベストということになった。今回はict部門が中心となって開発を進めるのではなく、現場と開発チームの全員参加で進めていく必要があるプロジェクト。いかに現場とコミュニケーションをとれるかが課題であり、都度完成した画面・機能を見せて、現場に理解してもらうためにはこのアジャイル開発は必須であった。ict推進本部でシステム開発を行う長岡 数朗はこう語る。
※1 アジャイル開発:近年、システム開発で取り入れられている開発方法。仕様や要件変更に対して柔軟な対応ができる開発手法で、工数を削減できるメリットがある
長岡:私は長年にわたりkonoikeグループの基幹システムを手がけていました。最初にしっかりと全体設計をして開発を進める方式とは違う、アジャイル開発の進め方に当初はとても戸惑いました。2週間区切りでリリースというスピード感にはなかなか慣れませんでしたが、ユーザーの声をフィードバックしながら開発を進められるメリットは大きかったです。
あと、システム会社とのやりとりにも苦労しました。基幹系・物流系に強いシステム開発会社というのが昔からあるのですが、アジャイル開発に対応できるシステム会社で物流業界の肌感覚を持っている会社はほぼ無かった。基礎的なことから一つ一つ伝えなければなりませんでした。
蓮實:スタートして3カ月頃、お願いしていたシステム会社とアジャイル開発を進めていたのだけれども、実質的にウォーターフォール型の開発※2になりかけたことがありました。このままではまずいと思い、開発会社の変更という苦渋の決断をすることに。このことで2021年11月を予定していたリリースが、半年伸びてしまいました。
※2 ウォーターフォール開発:前の工程を完全に終えてからでないと、次の工程に進めない従来型の開発方法
2週間のタームで機能を開発・追加していくアジャイル開発。このスピード感において、開発作業の全てを外部のitベンダーに依頼していては間に合わない。社内のエンジニアがフレキシブルに開発できるよう、ノーコードプラットフォームで進めることもこのプロジェクトでは必須だった。数ある条件に鑑みて、salesforceのプラットフォームを採用。そこでアジャイル開発やノーコードプラットフォームに造詣の深いict推進本部の持丸 貴之がチームにアサインされる。
持丸:私が開発で苦労したのは、各拠点から上がってくる要望を解決するために外部のアドオンを取り入れるか、salesforceの標準機能の組み合わせで実現させるかの判断でした。毎回5つぐらいの要望が上がってくる中で2週間に1回、拠点の方々に公開をする。このスピード感はなかなかハードでした。
長岡:konoikeグループの場合、輸送の管理だけではなく倉庫の手配、梱包方法、現地での設置までも対象としています。画面上でそれら全てを選択・記入できる仕様になっているため、とても複雑という点でも苦労しました。全ての輸送の過程をwebポータルからワンストップで確認できる一目で理解しやすいユーザーインターフェイスには、現場の声を反映して徹底的にこだわっています。
そして、2021年6月の開発スタートから10カ月。2022年4月に海上輸送の手配依頼、進捗確認、手配完了システム「kbx」のリリースを迎えるに至った。システム会社の変更や主要メンバーの離脱など数多くのピンチがあったが、チーム一丸でカバーし合い、難局を乗り切っていく。その後、2022年9月には航空輸送と見積もり機能を追加していった。
kbx入力画面イメージ
輸送に関してだけでなく倉庫の手配、梱包方法など細かい選択・記入も可能
最後にkbxの未来についてメンバーに聞いてみた。
長岡:このサービスはkonoikeグループに発注いただくお客さまが利用する前提のシステムですが、お客さまはkonoikeグループ以外とも取引がある。それゆえにkonoikeグループとのデータだけを一元化できても、お客さまにとって最大限に役立っているとは言い切れません。そういった意味では、他社貿易プラットフォームとのデータ連携についても考えなくてはならない。将来的には貿易業界全体でのデータ共有も必要と考えています。
持丸:お客さまにとって必要不可欠な機能の実装はいったん完了したと思っています。お客さまにもっと利用していただくためには、他社のシステムやメールよりも使いやすいシステムへの進化が必要です。そのためにはユーザーの声を拾い続け、付加価値となる機能を組み込んでいくことが大事だと考えています。
上月:私はkbxの普及をもっと加速していかなければならないと思っています。社内メンバーへの認知度を上げ、彼らが窓口となっているお客さまへの提案回数を増やしていきたい。現在kbxを使っていただいているお客さまの多くは、もともと取引のあった既存のお客さま。これからは新規のお客さまの利用に向けた提案を増やしていくつもりです。また、多言語対応によるグローバル展開等の機能強化も継続的に実施していきます。
蓮實:上月の言うようにkonoikeグループは今後、国際物流の新規顧客層を開拓していかなければなりません。リリースから1年以上が経って感じるのは、kbxが世の中に浸透するにはまだまだ時間がかかるということ。現時点では日本のデジタルフォワーディングの牽引者として、中長期的な種をまいた感じです。kbxの大きな花を咲かせるためには、まずはkonoikeグループ自体の認知度を上げなければならないと痛感しています。
これまでは見積もりなどのデータを社員個々人で持っていた。しかしkbxの導入により、拠点ごとにナレッジ共有ができるようになった。言い換えるとこれは、蓄積されたデータを参考に新入社員でも見積もりを簡単に作成することが可能になったということだ。
kbxがもたらす利便性はグループ内に限った話ではない。kbxは、konoikeグループの生産性を高めるためのシステムであると同時に、国際物流を利用する全てのお客さまの利便性を高めるサービスとなる。つまりは外部企業の理解と参加がこのサービスの価値だと言える。kbxを使うことで、お客さまが自社のナレッジを最大限に活用することができたならば、国際物流の世界は大きく変わる。
一つのシステムにデータを集約し、フォワーディング業務の全てを把握できる世界。それが開発メンバーの目指す未来となるだろう。
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